四 - 12
がならなくてね。何を云うにも気をおかなくちゃならんから心配で窮屈で実に苦しいよ。話は罪がないのがいいね。そして昔しの書生時代の友達と話すのが一番遠慮がなくっていい。ああ今日は図(はか)らず迷亭君に遇(あ)って愉快だった。僕はちと用事があるからこれで失敬する」と鈴木君が立ち懸(か)けると、迷亭も「僕もいこう、僕はこれから日本橋の演芸(えんげい)矯風会(きょうふうかい)に行かなくっちゃならんから、そこまでいっしょに行こう」「そりゃちょうどいい久し振りでいっしょに散歩しよう」と両君は手を携(たずさ)えて帰る。