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四 - 7
そうだ面白いじゃないかアハハハハ」

    「誰だそんな馬鹿は」

    「馬鹿じゃない、なかなか利口な男なんだよ、実業界でちょっと有名だがね、君知らんかしら、ついこの先の横丁にいるんだが」

    「金田か?何(な)んだあんな奴」

    「大変怒ってるね。なあに、そりゃ、ほんの冗談(じょうだん)だろうがね、そのくらいにせんと金は溜らんと云う喩(たとえ)さ。君のようにそう真面目に解釈しちゃ困る」

    「三角術は冗談でもいいが、あすこの女房の鼻はなんだ。君行ったんなら見て来たろう、あの鼻を」

    「細君か、細君はなかなかさばけた人だ」

    「鼻だよ、大きな鼻の事を云ってるんだ。せんだって僕はあの鼻について俳体詩(はいたいし)を作ったがね」

    「何だい俳体詩と云うのは」

    「俳体詩を知らないのか、君も随分時勢に暗いな」

    「ああ僕のように忙がしいと文学などは到底(とうてい)駄目さ。それに以前からあまり数奇(すき)でない方だから」

    「君シャーレマンの鼻の恰好(かっこう)を知ってるか」

    「アハハハハ随分気楽だな。知らんよ」

    「エルリントンは部下のものから鼻々と異名(いみょう)をつけられていた。君知ってるか」

    「鼻の事ばかり気にして、どうしたんだい。好いじゃないか鼻なんか丸くても尖(と)んがってても」

    「決してそうでない。君パスカルの事を知ってるか」

    「また知ってるかか、まるで試験を受けに来たようなものだ。パスカルがどうしたんだい」

    「パスカルがこんな事を云っている」

    「どんな事を」

    「もしクレオパトラの鼻が少し短かかったならば世界の表面に大変化を来(きた)したろうと」

    「なるほど」

    「それだから君のようにそう無雑作(むぞうさ)に鼻を馬鹿にしてはいかん」

    「まあいいさ、これから大事にするから。そりゃそうとして、今日来たのは、少し君に用事があって来たんだがね――あの元(もと)君の教えたとか云う、水島――ええ水島ええちょっと思い出せない。――そら君の所へ始終来ると云うじゃないか」

    「寒月(かんげつ)か」

    「そうそう寒月寒月。あの人の事についてちょっと聞きたい事があって来たんだがね」

    「結婚事件じゃないか」

    「まあ多少それに類似の事さ。今日金田へ行ったら……」

    「この間鼻が自分で来た」

    「そうか。そうだって、細君もそう云っていたよ。苦沙弥さんに、よく伺おうと思って上ったら、生憎(あいにく)迷亭が来ていて茶々を入れて何が何だか分らなくしてしまったって」

    「あんな鼻をつけて来るから悪るいや」

    「いえ君の事を云うんじゃないよ。あの迷亭君がおったもんだから、そう立ち入った事を聞く訳にも行かなかったので残念だったから、もう一遍僕に行ってよく聞いて来てくれないかって頼まれたものだからね。僕も今までこんな世話はした事はないが、もし当人同士が嫌(い)やでないなら中へ立って纏(まと)めるのも、決して悪い事はないからね――それでやって来たのさ」

    「御苦労様」と主人は冷淡に答えたが、腹の内では当人同士と云う語(ことば)を聞いて、どう云う訳か分らんが、ちょっと心を動かしたのである。蒸(む)し熱い夏の夜に一縷
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