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四 - 6
と不愉快を感ぜしめる。これが鈴木君の心の平均を破る第二の条件である。最後にその猫の態度がもっとも癪(しゃく)に障る。少しは気の毒そうにでもしている事か、乗る権利もない布団の上に、傲然(ごうぜん)と構えて、丸い無愛嬌(ぶあいきょう)な眼をぱちつかせて、御前は誰だいと云わぬばかりに鈴木君の顔を見つめている。これが平均を破壊する第三の条件である。これほど不平があるなら、吾輩の頸根(くびね)っこを捉(とら)えて引きずり卸したら宜(よ)さそうなものだが、鈴木君はだまって見ている。堂々たる人間が猫に恐れて手出しをせぬと云う事は有ろうはずがないのに、なぜ早く吾輩を処分して自分の不平を洩(も)らさないかと云うと、これは全く鈴木君が一個の人間として自己の体面を維持する自重心の故であると察せらるる。もし腕力に訴えたなら三尺の童子も吾輩を自由に上下し得るであろうが、体面を重んずる点より考えるといかに金田君の股肱(ここう)たる鈴木藤十郎その人もこの二尺四方の真中に鎮座まします猫大明神を如何(いかん)ともする事が出来ぬのである。いかに人の見ていぬ場所でも、猫と座席争いをしたとあってはいささか人間の威厳に関する。真面目に猫を相手にして曲直(きょくちょく)を争うのはいかにも大人気(おとなげ)ない。滑稽である。この不名誉を避けるためには多少の不便は忍ばねばならぬ。しかし忍ばねばならぬだけそれだけ猫に対する憎悪(ぞうお)の念は増す訳であるから、鈴木君は時々吾輩の顔を見ては苦(にが)い顔をする。吾輩は鈴木君の不平な顔を拝見するのが面白いから滑稽の念を抑(おさ)えてなるべく何喰わぬ顔をしている。
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